エコリュクス最先端:「ファブリカ」と「ファブリカ展」を訪ねて

心に響く映画のような展覧会

国境を、分野を超えて社会に語りかける力を発揮するファブリカ。その活動の軌跡を公開する「ファブリカ展—将来を見据える目」をミラノ・トリエンナーレが開催されているデザイン美術館で見た。このオープニングを記念して、アル・ゴアの講演会が行われたという。世界を代表するエコ・マスターとなったゴアの登場に、ミラノ市民が熱狂したことは言うまでもない。

ファブリカ展 ファブリカ展

展覧会は実に面白かった。構成、展示の手法、内容。隅々までクリエイティブなエネルギーに満ち溢れ、「この問題を知ってほしいんだ」「この気持ちを共有したいんだ」という熱い思いが、決して過剰でなく、しかし確実に、じんじんと伝わってくる。そんな展覧会だった。

展示は、ファブリカが開設されてから現在にいたるまでに取り組まれてきたプロジェクトのハイライトで構成されている。環境や飢餓をテーマにした一連の広告シリーズ、リサーチャーがファブリカに到着した日にすぐに出される課題「セルフポートレイト」(自分のセルフポートレイトを短い映像にまとめる)、地球が直面する危機をインタラクティブに体感できる作品など、シリアスなテーマを扱いながら、どれも見る人が興味を持って入ってこられる仕掛けになっている。

ファブリカ展 ファブリカ展

中でも興味深かったのが「COLORS NOTEBOOK」。世界中の僻地を含むさまざまな場所に届けられる真っ白なノート。そこに、政治ともビジネスともクリエイティブとも関係のない一般の人々が、関心のあること、問題と思っていることを自由に書き綴る。戦争反対の言葉もあれば、好きな人を思って描くハートの絵もある。さまざまな思いがつづられた何冊ものノートが、天井から吊り下げられ、ギャラリーの一角に夢のように浮かんでいる。「発言できない場所にいる人にも発言を」というメッセージが込められたこのノートは、まさに「地球市民とは何か」を考えさせられる好企画だ。近々、日本にも届けられるという。どんなメッセージで埋められるのか、今から楽しみだ。

COLORS COLORS NOTEBOOK
『COLORS NOTEBOOK』

会場を出ると、目の前は緑あふれる休日の公園。口々に感想を述べ合いながら出てくる来場者たちを待っているのは、オープンエアのカフェで啜る一杯のエスプレッソ。子供たちがはしゃぎ、恋人たちが寄りそう公園の風景を眺めながら、心に響く映画を観たあとのような気分をしばらく味わった。

エコリュクス最先端:「ファブリカ」と「ファブリカ展」を訪ねて